電気機器メーカーである富士通が、2026年度の新卒採用から「ジョブ型人材マネジメント」の考え方を拡大すると発表しました。
近年は、生産年齢人口の減少や仕事観の変化を受けて、企業がいかに優秀な人材を採用できるかが注目されています。
この記事では、富士通が新たに取り組む「ジョブ型人材マネジメント」が、Z世代と呼ばれる若い世代を取り込む人事施策として魅力的な内容だったのでご紹介します。
私自身は現在24歳の現役Z世代であり、会社員を2年ほど経験させていただいた後に個人事業主として活動しています。
実際に会社員として働いていた時にも、色々な葛藤の中で仕事をしてきました。
私なりにZ世代の価値観はよく分かると自負しているため、私自身の経験や感じ方を交えてお話しします。
この記事を読んだ時、「こんなマネジメントを行う会社があるなら行きたい」と感じて面白かったため、Z世代に刺さる人事施策として見てみてください。
- 富士通の「ジョブ型人材マネジメント」における2つの施策内容
- 「ジョブ型人材マネジメント」がZ世代に刺さる理由
富士通の「ジョブ型人材マネジメント」とは
まず初めに、富士通が新たに取り組む「ジョブ型人材マネジメント」の内容についてお話しします。
富士通の「ジョブ型人材マネジメント」の内容は、以下の2つの人事制度です。
仕事内容や職責に基づいて処遇を決める
ジョブ型人材マネジメントの1つ目の施策は、仕事内容や職責に基づいて処遇を決める制度です。
新卒採用において中心となっていた一斉入社・一斉教育の採用形態から、これまで一部の採用コースで適用していた、入社後に一人ひとりが担うジョブや職責、Job Descriptionをベースとした「ジョブ型人材マネジメント」に基づく採用形態へ本格的にシフトしていきます。これまでは、修士卒や学部卒など学歴に基づく一律の初任給で処遇していましたが、2026年度の新卒採用より、ジョブや職責の高さに基づいて処遇します。
新卒採用への「ジョブ型人材マネジメント」の拡大について : 富士通 (fujitsu.com)
日本企業の多くは、新卒採用した社員に対して、学部卒や修士卒などの学歴に基づいて、みんな同じ初任給で処遇することが一般的です。
このような、多くの日系企業で見られるこの人事制度は「職能資格制度」と呼ばれています。
職能資格制度は、「人」を基準に処遇を決める制度です。
新入社員が一律の殊遇を受け、経験や社歴に応じて処遇を決めていくため、日系企業特有の年功序列的な処遇制度になりやすいとも言われています。
企業の募集要項を見ると、大学卒○○円・修士了○○円など、学歴によって初任給が決まっていることが一般的ですよね。
私たちにとっては当たり前のように感じるけど、日本企業の特徴的な処遇制度であって海外ではあまり採用されていないみたいですね。
一方、今回富士通が採用した制度では、新卒から仕事内容や職責に応じて、それぞれ異なる処遇を行う制度です。
このように、与えられた職能・職責に応じて処遇を決める制度を「職務等級制度」と言います。
職務等級制度は、「仕事」を基準に処遇を決める制度です。
入社時からその能力に応じて仕事が振り分けられるため、スキルを持った社員がその能力を活かして適切な処遇を受けることができます。
また企業にとっては、一律の初任給では実現できない処遇を武器に、優秀で成長意欲のある新入社員を取り込むことにつながります。
職務等級制度は、一言でいえば「実力主義」です。能力や成長意欲の高い社員にとっては、成果が処遇にしっかり反映されるためモチベーションに繋がるでしょう。
企業目線で見ても、優秀な人材を集めることができるし、頑張る人にしっかりと給料を還元できます。無駄な人件費削減にもつながるかもしれませんね。
「職務等級制度」は、外資系企業では主流ですが、日本ではまだ実践している企業は少ないです。
より実力主義的な処遇制度をいち早く実施することで、成長環境を求める学生を呼び込むことができるかもしれません。
実践重視型の「有償インターンシップ」
2つ目の施策は、ビジネス実践重視型の長期・有償インターンシップです。
当社への共感を醸成するとともに入社後の自身の活躍をイメージできるよう、大学での研究や学外での活動を通じてより明確なキャリア志向を持ち、専門スキルを磨いて豊富な経験を積んだ人材向けに、当社の各領域におけるスペシャリストとともに実ビジネスに挑戦できる1か月から6か月にわたる長期のインターンシップを実施します。
新卒採用への「ジョブ型人材マネジメント」の拡大について : 富士通 (fujitsu.com)
多くの企業が実施するインターンシップは、3daysや1~2週間ほどの業務体験や適性判断が主流です。
このような短期インターンシップは、多くの企業を受けている学生にとって、様々な業務を経験できる機会として魅力的です。
就活生にとっては、サマーインターンなどを通じて企業のことを知ったり、選考を有利にすることができる機会として活用されていますね。
そして、富士通が新たに実施するインターンシップは、1か月から6か月にわたる有償のインターンシップです。
特定のスキルを磨いていた学生が、各領域のスペシャリストと実際のビジネスに挑戦し、収入を得ながらスキルアップを図ることができるインターンシップとなっています。
学生にとっては、特定のスキルを磨き上げることでキャリアを明確にする機会を、学生の早い段階で収入を得ながら享受できるとなると非常に魅力的です。
様々な領域でビジネスを展開している富士通だからこそできるインターンシップとも言えますね。
成長意欲のある学生にとっては、スキルと収入を得られる長期インターンシップほど魅力的な機会はないです!バイト辞めなきゃ!
企業にとっても、インターンを通じて優秀な学生を囲い込むことができるかもしれないですね。
学生のうちからがっつりスキルを磨きたくても、実践を通じて学べる機会は多くありません。
このような機会を設けることで、優秀な学生の成長を後押しすると同時に、彼らの採用に繋げることができるでしょう。
富士通では、上記2つの施策を「ジョブ型人材マネジメント」として、2026年度の新卒採用より本格化するといいます。
「ジョブ型人材マネジメント」がZ世代に刺さるワケ
では、なぜ富士通は「ジョブ型人材マネジメント」を推進するのでしょうか?
昨今では、働き手が減少することで企業の採用活動は難しくなっており、優秀な学生を十分に取り込むために魅力を高めることが求められます。
このとき、「ジョブ型人材マネジメント」はZ世代の価値観に刺さる施策として注目を集めています。
ここでは、なぜこの施策がZ世代に刺さるのか、私の経験や主観を交えて考察してみます。
Z世代の「成長意欲」に刺さる
まず、Z世代が持つ「成長意欲」に応える施策であることが挙げられるでしょう。
私たちZ世代は、早い段階でスキルを身に付け、どの環境でも活躍できるように成長したいと考えます。
その理由として、成長過程で色々な経済ショックを経験したり、時代の移り変わりが速すぎて特定のスキルは陳腐化することを認識しており、ひとつの会社に依存していることを不安に感じることがあると感じています。
なるべく早くスキルを身に付けて市場価値を高めておきたいと考えた時、「実践型有償インターンシップ」と「実力主義の処遇制度」は魅力的です。
なかなか実践を通じてスキルを身に着ける環境が無い中で、「実践型有償インターンシップ」は数少ない学びの場として活用できます。
やはりスキルを身に付けるとき、資格の勉強なども有効ですが、実務と座学では学べることが全く違いますもんね。実践型というのは魅力的です!
また、身に付けたスキルを活かすことで処遇に反映されるのであれば、スキルをさらに伸ばしておくモチベーションにもなるでしょう。
スキルを身に付けたのちに、そのスキルがしっかり生かせて、かつ処遇にも反映される環境が整っているわけですね。
このように、「ジョブ型人材マネジメント」は、Z世代の早くスキルを身に付けて市場価値を高めておきたいという「成長意欲」に応える施策として、Z世代に刺さる内容となっています。
私の体験談
私も、2022年に大学卒業後に新卒で2年間ほど会社員を経験しましたが、今は個人事業主として活動しています。
私が会社員を続けられなかった最大の理由が「将来への不安と成長時間の無さ」だったと感じています。
もともと出世を目指すというよりも、どこでも活躍できるスキルを身に付けることを重視していたため、本業では営業を試行錯誤しながら、ずっと資格の勉強と副業を続けてきました。
このとき、どうしても会社員だとその業界・業種以外で生かせないスキルを磨く必要性が出てくることや、スキルをつけても処遇は一切変化しないことが悩みとなっていました。結果として、起業した方が早いとなってしまったわけです。
もし、実践形式でスキルを身に付け、そのスキルを活かして処遇に反映できる環境があれば、その職場で働き続ける理由になるのではないでしょうか。
Z世代の「コスパ・タイパ重視」に刺さる
次に、Z世代が持つ「コスパ・タイパ重視」の価値観に応える施策であることも言えるでしょう。
Z世代は、将来何があってもいいように早くから貯金をしたり、若い時間こそ価値があると考えて有意義に過ごしたいと考える傾向があります。
そのため、無駄なお金・無駄な時間をなるべく浪費したくないと考える「コスパ・タイパ重視」の価値観を持っています。
この価値観にも、「ジョブ型人材マネジメント」は刺さる施策なっています。
「職務等級制度」が導入されることで、能力・スキルを磨いた結果として、すぐに処遇に反映されます。
逆に、職能資格制度に中では、いくらスキルを磨いたとしても新入社員は一律の処遇となるため、一種の「ムダ」が生じると考えられますよね。
スキルを磨いて自分だけの価値にしたり、社会貢献の手段にしたいと考えるとき、生かせる場もなく一律で処遇されるとなると、スキルを磨く理由が分からなくなりそうです。
また、職能資格制度では、能力があっても社内評価が適切に行われなければ処遇に反映されにくいですし、評価が適切でも出世にはある程度の時間が必要になってしまいます。
評価制度は企業が組織を機能させるために必要不可欠だとはわかっていますが、やはり年功序列的な要素を感じると実力では抗えないなと感じてしまいますね…
スキルを磨いてきたZ世代にとっては、実力だけで評価される方が処遇・時間の「ムダ」が無いため魅力的に映るわけです。
私の体験談
私はこの「コスパ・タイパ重視」の価値観を強く持っていたため、早期退職を選んでいます。
実際、「無駄なお金は使いたくない・時間を浪費したくない」という価値観はZ世代の特徴として多くの方が持っているのではないかと感じています。その具体例として分かりやすいのが、「Z世代が会社の飲み会に来ない」と言われることでしょう。
もともと出世ではなく市場価値に関心があるZ世代にとっては、会社の飲み会に行くよりも、その時間で自己研鑽を行う方が効率が良いですし、若いうちにしかできない遊びもしておきたいと考えます。
属人的な評価制度は、会社での見え方や帰属意識も重要な要素となってきます。完全実力主義で評価してくれる方が、Z世代の「成長意欲」や「コスパ・タイパ重視」の価値観にとってはモチベーションを持って取り組みやすく、結果として会社の業績や従業員満足の向上につながるのではないでしょうか。
「処遇制度」と「インターン」の繋がり
この2つの制度は、両者が補完し合うような関係になっています。
有償インターンシップで早いうちに身に付けたスキルを、実力主義の処遇制度で生かすことができる、という繋がりです。
Z世代は、早いうちから市場価値を高めることで、早期のキャリア形成を望む傾向があります。
このとき、学生のうちからスキル身に付けておき、このスキルを活かすことのできる環境に身を置くことができると、中長期的な目線でキャリアを見据えながらスキルアップができる仕組みになっています。
スキルアップ自体の魅力だけでなく、そのスキルをどのように生かしていけるのかが見えている制度が、Z世代にとっては「ムダ」が無く、かつ将来への不安を払拭できる制度として刺さるわけです。
早期のキャリア形成を望むZ世代にとっては、「なぜスキルを磨くのか」と「磨いた先にどのように生かすことができるのか」が明確な点が、自己研鑽だけで実現できるスキルアップとの差別化点になっていますね。
さらに企業にとっても、インターンシップで育てた学生を囲い込んだり、入社前から即戦力を育成できるなど、採用面でのメリットを享受できます。
生産年齢人口が減り、採用や人材育成が難しいと言われる中で、Z世代のニーズに応えながら採用を進めていくとは…
Z世代の価値観を踏まえたうえで、優秀な学生を即戦力として迎え入れることのできる、魅力的で考えられた制度だと感じます。
- Z世代の「成長意欲」に応える機会提供となっている
- Z世代の「コスパ・タイパ重視」の価値観に応えるムダの無い制度
- 「処遇制度」と「インターンシップ」の繋がりが明確でキャリア形成を促進する
まとめ
当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、富士通が2026年度から実施する「ジョブ型人材マネジメント」について、その内容とZ世代に刺さる理由について解説しました。
私たちZ世代は、色々な面で従来とは異なる価値観を持った世代だと言われています。
私自身も、仕事観・キャリアへの考え方は従来とは違うのだろうと感じながら会社員を続けてきました。
このような中で、Z世代の価値観に合わせた新たな人材マネジメント制度を実施している企業が出てきたこと、そしてその内容が非常に魅力的であったことに嬉しさを覚えています。
よりこのような企業が増え、Z世代が価値観に合わせて働き方を選べる環境が整ってくると、Z世代も企業側も互いに満足度の高い結果になっていくのではないでしょうか。
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