【財務会計】損益計算書(P/L)の読み方|初心者でもわかる入門解説

この記事でわかること

 基本的な損益計算書(P/L)の読み方

 会社の「お金の使い方」と「稼ぐ力」が読めるようになる

 会社の収益性を読み取り、業績を評価できるようになる

会社経営を続けていくためには、お金を上手に使って利益を出し続けなければなりません。そのためには、会社が事業の中でどのようにお金を使って、どのくらいの利益を生み出すことができたのかを把握することが非常に重要です。

損益計算書をはじめとする会計書類は、作成することにより会社の資産状況やお金の使い方を知ることができるため、経営を続けていくために必要不可欠な書類です。

  • 損益計算書(P/L)って何?
  • 損益計算書の見方や読み方がわからない
  • 会社の業績を評価して、会社選びの参考にしたい

今回は、このような疑問やお悩みを解決できるよう、損益計算書の基本的な見方から、損益計算書を用いた経営の分析方法まで詳しく解説します。

損益計算書を始めて見る方でも理解できるよう、基本的な部分からしっかりと説明していきます。

筆者は、簿記や中小企業診断士の勉強・本業では営業コンサルを通して多くの財務諸表を見てきました。実際に会社で採用されている財務諸表は事業形態などによって特徴は異なりますが、基本的な読み方は変わりません。

そして、会社の会計書類を読めるスキルは、どのような仕事をされている方でも生かすことができるものです。ご自身の会社経営はもちろんのこと、会社員の方でも、自身が就いている会社・もしくは転職先の企業選びにも生かすことができるでしょう。

目次

損益計算書(P/L)について

損益計算書(P/L)とは

損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)とは、一定期間における「会社の経営成績」を表す書類です。

一事業年度でどれだけの「売上」を確保できたのか、どのような形で「費用」を使ったのか、そして最終的に残った「利益」はどれくらいなのかが記載されます。

また、「報告式」と呼ばれる表示方法を採ることが多いのも特徴です。報告式とは、上から下に降りていくように読んでいく表示方法で、具体的には、事業によって生み出された売上を最上位に記載し、そこから費用を性質ごとに分類して引いていきます。

売上高から各費用を引いたそれぞれの段階で、5種類の利益を算出することで、どのような費用の使い方をしているのかを把握できるようになっています。

損益計算書(P/L)は、一定期間における会社の経営成績を表す書類である。

損益計算書の作成義務

損益計算書は、会社によるお金の使い道や利益額を把握するための重要な書類です。

そのため、会社法により、株式会社が作成しなければいけない書類の1つに含まれています。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

会社法 | e-Gov法令検索

損益計算書は、株式会社であれば必ず作成しなければならない。

貸借対照表(B/S)との違い

損益計算書とセットで用いられることの多い書類に、「貸借対照表(B/S)」があります。

「損益計算書(P/L)」が、一定期間における「会社の経営成績」を表す書類であるのに対して、

「貸借対照表(B/S)」は、ある時点における「会社の財政状態」を表す書類です。

貸借対照表(B/S)は、会社が保有しているお金などの資産をどのくらい、どのような形で持っているのかを表しており、会社が経営を続けるのあたって十分な資金・支払い能力があるかを評価することに用いられます。

そして、貸借対照表は、損益計算書と同じく、株式会社は作成しなければなりません。

貸借対照表で「会社にどのくらい資産を保有しているのか」を、損益計算書で「その資産をどのように使って収益を上げることができるのか」併せて分析することで、会社としての経営力を把握することができるのです。

貸借対照表については別の記事で詳しく解説しています。

貸借対照表(B/S)は、ある時点における会社の財政状態を表す書類である。

損益計算書の読み方

ここからは、具体的な損益計算書の読み方を解説します。

損益計算書の概要

損益計算書は、以下のような形式をとります。

損益計算書は、収益(売上)から各費用を差し引いた利益がどの程度かを表すものです。

費用(もしくは収益)を、その性質や特徴に応じて、売上原価」「販管費および一般管理費」「営業外損益」「特別損益」「法人税等に分類し、売上から差し引いていきます。

損益計算書の利益と費用の関係をまとめると、以下のような構造になります。

売上からそれぞれの費用を差し引いていくと、売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益が算出されていき、最終的に手元に残った利益額が当期純利益です。

損益計算書では、費用(もしくは収益)をその性質によって分類し、それらを売上から差し引いていくことで利益を算出していく。

売上総利益(売上-売上原価)

売上総利益は、事業による「売上高」から「売上原価」を差し引いたものです。

  • 売上高:商品の販売やサービスの提供など、本業によって得られた売上の総額
  • 売上原価:商品の原材料の仕入などのかかった費用

売上総利益は、「粗利益」とも呼び、会社の収益をおおまかに把握できます。

営業利益(売上総利益-販売費および一般管理費)

営業利益は、売上総利益から「販管費および一般管理費」を差し引いたものです。

  • 販売費:事業における販売業務により発生した費用(給料・旅費交通費・販促費など)
  • 一般管理費:事業における管理業務により発生した費用(家賃・減価償却費など)

営業利益は、売上高から事業を行うために必要となる費用をすべて差し引いた額です。そのため、営業利益を見ればその会社の営業力・収益力を把握することができます。

経常利益(営業利益±営業外損益)

経常利益」は、営業利益に「営業外収益」を加算、「営業外費用」を減算したものです。

  • 営業外収益:会社の事業活動(本業)以外から発生した収益(受取利息・受取配当金など)
  • 営業外費用:会社の事業活動(本業)以外から発生した費用(支払利息など)

経常利益では、会社の事業(本業)以外での収益・費用も加味して利益を算出します。例えば、十分な営業利益を生み出している会社であっても、借金が多ければ支払利息が負担になって経常利益がマイナスになる可能性があります。

そのため、経常利益を見れば、会社がどれだけ安定した財務状態で事業を行えているかを評価することができます。

税引前当期純利益(経常利益±特別損益)

税引前当期純利益」は、経常利益に「特別利益」を加算、「特別損失」を減算したものです。

  • 特別利益:期間内で例外的・臨時的に発生した収益(固定資産売却益など)
  • 特別損失:期間内で例外的・臨時的に発生した損失(固定資産売却損、災害損失など)

税引前当期純利益は、税金以外のすべての費用・収益が加味された利益です。

当期純利益(税引前当期純利益-法人税等)

当期純利益」は、税引前当期純利益から「法人税・住民税および事業税」を差し引いた額です。

  • 法人税・住民税および事業税:課税所得に対して課される税金

当期純利益は、税金の支払いまで加味した最終的な利益です。当事業年度において、どれだけの利益・損失を生み出したのかを把握することができます。

損益計算書を用いた経営分析

損益計算書を読み取ることで、会社がどのように費用を使っているのか、どれだけの利益を獲得できたのかを把握できるとお話ししました。こからは、損益計算書の数値を用いて、会社の経営を評価する経営分析について解説します。

損益計算書のみで行える経営分析には、収益性分析があります。

収益性分析とは

「収益性分析」とは、企業が収益を獲得する力を図る分析手法です。

具体的には、会社が使ったそれぞれの費用に対してどれだけの利益を生み出すことができているのかを分析します。
ここでは、損益計算書の数値を用いて行うことができる、代表的な収益性分析の指標と算出方法を解説します。

売上高総利益率

売上高総利益率は、会社が提供する商品やサービス自体の収益性を示しています。

売上総利益は、売上-売上原価で算出できる粗利益であると解説しました。
つまり、材料費の高騰などにより売上原価が高止まりしてしまうと、売上総利益が減少することになります。

売上高総利益率が高い会社ほど、商品やサービスの原材料を適切な価格・方法で仕入れることができ、その費用に見合った十分な売り上げを確保できていることを意味しています。

売上高総利益率(%)=(売上総利益÷売上)×100

売上高営業利益率

売上高営業利益率」は、その会社の事業(本業)の収益性を示しています。

営業利益は、事業(本業)を行うために必要な費用をすべて加味した利益です。

売上高営業利益率が高い会社ほど、人件費などの販管費を適切な範囲内に収めながら、それに見合った十分な売上高を確保できており、事業の収益性が高いと判断することができます。

売上高営業利益率(%)=(営業利益÷売上高)×100

売上高経常利益率

売上高経常利益率」は、事業(本業)以外の収益・費用まで加味した総合的な収益性を示しています。

経常利益は、営業外収益や営業外費用を加味した利益です。

営業利益が十分に確保できていたとしても、営業のために使っている費用が借金によって賄われているような状況では、利息の支払いによって経常利益は減少してしまいます。

売上高経常利益率が高い会社ほど、事業が円滑に行えているだけでなく、事業を行うための資金繰りなども安定しており、総合的に収益性の高い会社であると判断できます。

売上高経常利益率(%)=(経常利益÷売上高)×100

収益性分析の具体例をご紹介します。

まとめ

当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、損益計算書の基本的な読み方から、損益計算書の数値でできる収益性分析の手法を、特に初心者の方に向けて解説しました。

冒頭でもお話ししました通り、損益計算書をはじめとする会計書類を読めるスキルは、どんな仕事に就いていても使う場面があるものです。自分の能力を高めたいと考えた時に、簿記などの会計に関する勉強は非常にオススメです。

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