【財務会計】貸借対照表(B/S)の読み方|初心者でもわかる入門解説

この記事でわかること

基本的な貸借対照表(B/S)の読み方

会社の持っている資産や財政状態を読み取れるできるようになる

会社の安全性を読み取り、評価できるようになる

会社を経営するにあたって、お金をはじめとする資産を上手に使うことは欠かせません。

会社は、経営を円滑化するにあたり、貸借対照表をはじめとする会計書類を作成します。貸借対照表などの会計書類を読めるようになることは、会社の財務状態を評価することができるようになる、非常に有益なスキルです。

  • 貸借対照表って何?
  • 貸借対照表の見方や読み方を知りたい
  • 貸借対照表の分析で何がわかるのか

今回は、このような疑問やお悩みを解決できるよう、基本的な貸借対照表の読み方から、貸借対照表の分析に用いる各指標と分析のポイントを紹介します。

今まで貸借対照表を見たことがない初心者の方でも理解できるように、基礎から解説していきます。

私は、簿記や中小企業診断士の勉強で会計について学び、本業である営業コンサルで会社の財務諸表を見てきました。
近年は、将来の不確実性が増す中で、会社が安定した資金繰りができていることの重要性も増しています。

そんな中で、会社の財政状態を分析できるようになることで、会社の経営状態の良し悪しを客観的に評価できるようになります。ご自身の会社経営はもちろんのこと、会社員の方でも、自身が就いている会社・もしくは転職先の企業選びにも生かすことができるでしょう。

目次

貸借対照表(B/S)について

貸借対照表(B/S)とは

貸借対照表(B/S:バランスシート)とは、ある時点における「会社の財政状態」を表す書類です。

ある時点において会社が有している資産負債、さらにはその差額となる純資産をリスト化します。

そして、どのような資産をどれくらい持っているのか、借金(負債)がどれくらいあるのかなど、会社の資産状況の全体像を把握することができる書類です。

また、貸借対照表は、通常は事業年度末に作成されます。前年の事業年度末に作成した貸借対照表と比較することで、当事業年度を経て財政状態にどのような変化があったのかを分析することもできます。

貸借対照表(B/S)は、ある時点での会社の財政状態を表す書類である。

貸借対照表の作成義務

貸借対照表は、会社の財政状態を知るための重要な書類です。

そのため、会社法により、株式会社が作成しなければいけない書類の1つとして定められています。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。

会社法 | e-Gov法令検索

貸借対照表は、株式会社であれば必ず作成しなければならない。

損益計算書(P/L)との違い

貸借対照表とあわせて、「損益計算書(P/L)」という言葉を耳にする方も多いのではないでしょうか?

貸借対照表(B/S)が、ある時点における「会社の財政状態」を表す書類であるのに対して、

損益計算書(P/L)は、一定期間における「会社の経営成績」を表す書類です。

損益計算書は、1事業年度において、どのようにお金を使い、どのくらい収益をあげることができたのかを表す成績表のようなものです。

損益計算書は、貸借対照表と同じく、会社法により株式会社は作成しなければならない非常に重要な書類です。

貸借対照表と損益計算書の二つを用いることで、「会社にどのくらい資産に余裕があるのか」「その資産をどのように使って収益を上げることができるのか」を分析し、会社としての強さを把握することができるのです。

損益計算書(P/L)は、一定期間における「会社の経営成績」を表す書類である。

貸借対照表の読み方

ここからは、具体的な貸借対照表の読み方を解説します。

貸借対照表の概要

貸借対照表は、このように左右に分かれた表形式になっています。

借方(左側)

この時、表の左側を「借方」と呼び、会社がどのような形で資産を有しているのかを表します。これが、「資産の部」に該当します。

貸方(右側)

また、表の右側を「貸方」と呼び、会社が持っている資産の元手となったお金をどのように調達したかを表します。

元手の調達方法が借入れならば「負債の部」、資本金や利益が元手になっていれば「純資産の部」に記入していきます。

このように、調達したお金(貸方)をどのような形で資産として有しているのか(借方)を表す貸借対照表においては、借方と貸方の合計は必ず一致します。

どのようにお金を調達したのかを貸方(右側)で、調達したお金をどのような形で資産として有しているのかを借方(左側)で表す。

勘定科目

貸借対照表においては、会社が持っている財産(資産)を、その種類や性質で分類して記載されます。

この際、「勘定科目」とよばれる分類項目を用いて資産を分類します。

各勘定科目がどこに表示され、どのような性質を持っているのかを知らなければ貸借対照表を理解することは難しいため、まずは全体像と簡単な特徴を把握しましょう。

資産や資金の特徴や性質をもとに、「勘定科目」に分類する。

資産の部

「資産の部」は貸借対照表の借方(左側)に該当します。

流動資産

流動資産は、資産の中でも短期間で現金化することが想定されるものが該当します。

  • 現金:硬貨や紙幣など
  • 預金:普通預金や当座預金など
  • 受取手形:近い将来に支払われることが約束された手形(有価証券)
  • 売掛金:掛け販売を行い、近い将来に支払われることが約束された債券(貸金)
  • 有価証券:会社が保有する株式や債券
  • 棚卸資産:小売業や卸売業における商品や材料の在庫

固定資産

固定資産は、会社が長期間にわたって保有・使用する資産が該当します。

(有形固定資産)

  • 建物:営業するにあたって使用している建物
  • 車両:社用車など会社が保有する車両
  • 土地:店舗や工場用に保有している土地

(無形固定資産)

  • 特許権:会社が保有する特許権(売買可能)
  • のれん:ブランド力や技術力などのことで、企業の買収の際に発生する
  • ソフトウェア:会計システムなどのプログラム

(投資その他の資産)

有形固定資産・無形固定資産のどちらにも該当しないものであり、投資有価証券・関係会社株式・長期貸付金などの勘定科目が該当します。

資産の部は、保有する資産を特徴別に分類した資産リスト。

資産を「流動」と「固定」に分類する基準には「ワンイヤールール」があります。

ワンイヤールールとは、決算日から1年以内に現金化もしくは費用化されるものを流動に、それ以外のものを固定に分類するというものです。貸借対照表においては、流動性の高いものから順に上から記載していきます。それぞれの資産がどのように分類されるかの基準として覚えておくと良いでしょう。

負債の部

負債の部では、会社の資金の中でも返済が必要なものが該当します。
他人からの借り入れなどが該当するため、他人資本と呼ばれます。

流動負債

流動資産は、資産の中でも短期間(一年以内)で現金による返済をすることが想定されるものが該当します。

  • 支払手形:近い将来に支払わなければならない手形(有価証券)
  • 買掛金:掛け仕入れを行い、近い将来に支払わなければならない債券(借金)
  • 短期借入金:一年以内に返済しなければならない借金

固定負債

固定負債は、一年以内には返済を行わなくてもよい負債が該当します。

  • 社債:会社が発行した債券。満期日までに返済しなければならない。
  • 長期借入金:一年以上先の将来に返済しなければならない借金

負債の部では、返済が必要な負債(他人資本)の種類と大きさが把握できる。

純資産の部

純資産の部では、会社が調達したお金の中でも、返済義務のない資金が該当します。
株主による出資や、事業で生み出した利益の内部留保などがあり、これらを自己資本と呼びます。

株主資本

純資産の部の中でも、「株主資本」が最もよく登場します。
ここでは割愛しますが、株主資本の他にも、「評価・換算差額等」や「新株予約権」なども純資産の部に表示されます。

  • 資本金:株式からの出資や、経営者の自己資金による会社の財源。会社設立時に必ず準備しなければならない
  • 資本剰余金:資本金を除く株主からの出資金
  • 利益剰余金:会社が事業によって得た利益を源泉とした資金

純資産の部では、自己資本の状態を把握でき、会社の財源に余裕があるのかを評価できる。

貸借対照表を用いた経営分析

貸借対照表を用いることで、会社の財政状態を評価することができます。
会計書類を用いた経営分析にはいくつかの種類がありますが、貸借対照表で行える経営分析に「安全性分析」があります。

安全性分析

「安全性分析」とは、会社が借金を返済できる能力や倒産のリスクなどを分析し、会社が経営を継続していく中でどれだけ安全な財務状態であるかを把握するものです。

ここでは、貸借対照表に記載された数値を用いて行うことができる、代表的な安全性分析の指標と算出方法を解説します。

安全性分析により、会社の財政状態がどれだけ安全かを評価できる。

自己資本比率

自己資本比率とは、会社の財源となる資金がどれほど自己資本で賄われているかを表す指標です。
貸借対照表の右側(貸方)において、純資産がどれくらいの割合を占めているかを表します。

自己資本比率が高い状態は、借金をすることなく会社の財源を確保できていることを示しているため、倒産のリスクが少なく望ましい状態であると言えます。

一方、自己資本比率が低ければ、多くの借金を行わなければ財源を確保できない状態であり、返済義務に追われた厳しい経営状態である可能性があります。

一般的には、自己資本比率が30%~40%程度の会社は、倒産のリスクが少ない安全な会社であると判断できるとされています。

自己資本比率(%)=純資産÷(負債+純資産)×100

流動比率

流動比率とは、短期的な負債の返済能力を表す指標です。

一年以内に返済しなければならない負債である「流動負債」に対して、一年以内に現金化して返済に充てることができる「流動資産」をどれだけ保有しているかを算出します。

流動比率が100%を下回っている状態では、短期的に返済しなければならない負債を賄う資産が不足していることを意味していますので、対策が必要です。

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

固定比率

固定比率とは、長期的な資金繰りの安全性を評価する指標です。

長期的に保有・使用する「固定資産」を、どれだけ「純資産」によって調達できているかを表しています。
長期的に保有する固定資産は、返済が必要な負債ではなく、返済義務のない自己資本で調達することが望ましいです。

固定比率が100%を下回っている状態では、固定資産の調達のすべてを自己資本で賄うことができていることを意味するため、長期的に安全な財務状況であると言えます。

また、会社経営にとっては、ある程度の借金をした上での投資も必要となることも当然です。そのような場合には、固定比率が120%を超えない状態であれば比較的安全であるとされています。

固定比率(%)=固定資産÷純資産×100

貸借対照表を用いた安全性分析の具体例を紹介します。

まとめ

当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、貸借対照表の読み方から経営分析の方法まで、初心者の方でも理解できるよう基礎的な部分から解説させていただきました。

会計書類を読めるようになると、会社の経営を財務的視点から評価できるようになります。貸借対照表は計算書類の中でも最も重要な書類であり、経営分析には欠かせないものですので、当記事で少しでも皆様の学習の参考になれば幸いです。

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