- モチベーション理論とは何か
- 代表的な4つのモチベーション理論
- モチベーション理論に基づくマネジメントの考え方
人間のモチベーションを引き出すことは簡単ではありません。特に、若い世代を部下に持つ方々は、彼らのモチベーションを保つマネジメントに苦戦することが多いのではないでしょうか?
- 部下がなかなかやる気を出してくれない
- 部署の士気を高めて活気ある職場にしたい
- どうマネジメントしたらモチベーションが高まるだろう
今回は、このようなお悩みを持つ方々に向けて、4つのモチベーション理論とそれらに基づくマネジメントのポイントをご紹介します。
日々の業務の中でのマネジメントのご参考にしていただき、仕事への活力・効率アップ、昇進・昇格へとつながる手助けになれば幸いです。
モチベーション理論とは?
「モチベーション理論」とは、人々が積極的に行動する(モチベーションが高まる)きっかけとなるものは何なのか、そして、どのようなプロセスでモチベーションが引き出されるのかを研究し理論化したものです。
モチベーション理論とは、「人は何によってやる気が高まるのか」「何を動機づけにして行動を起こすのか」を研究した学問のことです。
モチベーション理論とは? 組織運営に役立つ理論を解説 | ワークマネジメント オンライン (work-management.jp)
モチベーション理論は、1950年ごろに様々な研究が行われたことで大きく発展し、時代とともに多くの理論が生み出されてきました。
モチベーション理論を理解することで、人間のモチベーションが引き出されるきっかけやプロセスをに基づいた、マネジメント手法を検討する上でベースとなる考え方を知ることができます。
モチベーション理論4選
ここでは、数あるモチベーション理論の中でも、有名かつ理解しやすい4つをご紹介します。
欲求段階説
モチベーション理論の中でも特に有名な理論が、「欲求段階説」です。
欲求段階説は、アメリカの心理学者であるマズローによって提唱された理論です。
マズローは、人間がもつ欲求を、下位欲求から上位欲求までの5段階に分けて考えます。
そして、下位欲求が満たされることで初めて次の段階の欲求が生じると説明しています。
第1段階:生理的欲求
「生理的欲求」は、5段階の中で最も下位の欲求に該当します。
生理的欲求は、食事や睡眠などといった、人間が生存し、生きていくために必要な基本的な要素に対する欲求です。
十分な食事や睡眠が得られていなければ、まずこれらを満たすことが優先されるため、高次な欲求が生じにくくなることは非常にイメージしやすいのではないでしょうか?
第2段階:安全の欲求
生理的欲求が満たされると生じるのが「安全の欲求」です。
安全・安心な状態を求め、危険を回避したいという欲求であり、身の安全のみならず経済的・心理的な安全なども幅広く含まれるとされています。
第3段階:所属と愛の欲求(社会的欲求)
安心・安全が約束された状態になると生じるのが「所属と愛の欲求」(社会的欲求)です。
所属と愛の欲求とは、集団に属すことや、友人や家族・恋人などとの関係性を有し、社会的なつながりや愛情を享受したいという欲求です。
第4段階:尊重の欲求
社会的なつながりや愛情を獲得すると、「尊重の欲求」が生じます。
尊重の欲求は、単なる社会的なつながりのみならず、他者から尊敬され、自分が他社よりも優れていると認識したいと考えるようになるというものです。自我の欲求・自尊欲求と呼ぶこともあります。
第5段階:自己実現の欲求
「自己実現の欲求」は、欲求段階説の中でも最も上位に位置する欲求です。
自身の潜在的能力を最大限引き出し、成長を通じて自己実現したいという欲求です。
マズローの欲求段階説に基づけば、「会社でこのような人材になりたい」「仕事の中でスキルを獲得して成長したい」など、人々のモチベーションに直結する考えは、尊重の欲求までが満たされて初めて生じるものであることが理解できます。
X理論・Y理論
「X理論・Y理論」は、アメリカの経営学者であるマグレガーによって提唱されました。
X理論・Y理論では、それぞれの理論における人間観を定義した上で、マネジメントを行う対象が持つ人間観に合わせて動機付けを行うことを必要としています。
X理論における人間観
X理論における人間観は、「生まれつき仕事が嫌いで、できることなら働きたくない」と考える消極的な考え方であるという特徴があります。
X理論における人間観では、マズローの欲求段階説でいう下位欲求(生理的欲求・安全の欲求)のみを有していることになるため、働くよう説得するために、命令や統制が必要になると考えます。
そもそも働きたくないと考えるX理論の人間観を持つ人間に対しては、人事におけるガバナンスを強化し、命令や統制による強制が必要であると考えます。
Y理論における人間観
Y理論における人間観は、欲求段階説における上位欲求を有しており、報酬や責任などの与えられる要素によって献身的に働くという特徴があります。
このようなY理論の人間観を持つ人間に対しては、報酬や責任・やりがいのある仕事など、能動的に働くきっかけを提供することでモチベーションを高めることができると考えます。
動機付け=衛生要因(二要因論)
「動機付け=衛生要因(二要因論)」は、アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグにより提唱された理論です。
動機付け=衛生要因では、業務における各要素を「動機付け要因」と「衛生要因」に分け、これらの両方が満たされることにより仕事への満足感が高まり、モチベーションも引き出されると考えます。
動機付け要因
動機付け要因とは、仕事への満足感・モチベーションアップに直結する要因です。
動機付け要因が満たされることで、対象の積極的な態度・行動を引き出すことができます。
- 達成感
- 認められること
- 仕事内容の充実
- 責任
衛生要因
衛生要因とは、整っていなければ不満を生み出してしまう要因です。
これらを満たしても、対象の積極的な態度・行動を引き出すことに直結はしませんが、満足できる衛生要因を提供しなければ不満を生み出しモチベーションダウンの原因となってしまいます。
- 給与
- 人間関係
- 労働環境
- 衛生的
- 経営方針や方向性への不信
動機付け=衛生要因に基づけば、まず衛生要因が満たされているのか、そして、社員それぞれに合った動機付け要因を提供できているかを考慮することが重要です。
「不満の防止」と「モチベーション向上」の両立を図ることができるよう意識しましょう。
目標設定理論
「目標設定理論」は、アメリカの心理学者であるロックを中心に提唱された理論です。
目標設定理論は、目標がモチベーションの大きな源泉となることに加え、目標の設定の仕方によってモチベーションの上がり方が変化することを主張しています。
モチベーションが向上しやすい目標の設定方法には、以下の3つを意識することが重要です。
困難な目標であること
目標設定理論では、設定する目標の難易度が高いとモチベーションも高まりやすいとしています。
高い目標に対しては、達成するためのプロセスにおいて自発的な創意工夫が求められます。さらに、達成した際の満足感や達成感が大きいため、次につながる動機付け要因を獲得しやすいと考えることもできます。
ただし、難易度が高すぎる目標はプレッシャーに繋がり、逆にモチベーションが低下する恐れがあるため、あくまで当事者が目標の内容に納得していることが必要であることに注意する必要があります。
明確かつ具体的な目標
明確かつ具体的な目標を設定することも非常に重要です。
定性的・抽象的な目標を設定してしまうと、自らが達成までの筋道を立てることが難しくなります。
プロセスを検討しやすく、達成基準も明確な目標を設定させることを意識します。
フィードバックを与える
目標達成を目指す過程で、業務に対するフィードバックが与えられるとモチベーションが高まりやすいと言われています。
フィードバックを与えられることで、進捗に対する方向性の修正を行えるようになり、目標達成の可能性を高めることに直結します。さらに、フィードバックの過程で新たな目標の設定が誘発されることで、モチベーションをもう一段階高めることができるかもしれません。
フィードバックを通じて目標が曖昧になることでモチベーションが下らないように注意しながら、積極的にフィードバックを行うことが重要です。
まとめ
当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回は、マネジメントに生かせる4つのモチベーション理論を紹介しました。
- 欲求段階説:下位欲求から順に満たしていく
- X理論・Y理論:それぞれの人間観に合わせたマネジメントを行う
- 動機付け=衛生理論:不満の抑制とモチベーションを両立する
- 目標設定理論:3つのポイントを留意した適切な目標を設定する
これらのモチベーション理論は、すべて人間がモチベーションを生み出す要因に着目しています。
これらのモチベーション理論を参考にしながら、日々のマネジメント手法を工夫することで、部下のモチベーションをよりうまく引き出せるようになるかもしれません。
日々の業務で少しでも実践できるマネジメントの参考になることを願っております。
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