【運営管理】新QC7つ道具とは|図解でイメージや特徴・使い方を整理する

中小企業診断士の一次試験科目である運営管理に「新QC7つ道具」という内容が登場します。

新QC7つ道具をはじめ、製造現場における品質管理手法には様々なものがあります。

しかし、製造業などに携わったことにない方には、それぞれの管理手法をどのように活用するのかのイメージが湧きにくく、地味に厄介な内容になりがちです。

この記事では、中小企業診断士試験を2023年度に受験し、独学1年で502点(運営管理は67点)で合格した私が、新QC7つ道具について、それぞれの図解を交えて特徴や活用方法を解説しています。

中小企業診断士試験の運営管理においては、新QC7つ道具のそれぞれの名称や特徴さえ整理できていれば得点できる問題が多く、実はそこまで難易度は高くありません。

勉強の合間やスキマ時間に、改めて新QC7つ道具の要点整理にこの記事を活用いただければ幸いです!

この記事でわかること
  • 新QC7つ道具の全体像と攻略のポイント
  • QC7つ道具との違い
  • 新QC7つ道具それぞれの特長や図解
  • 新QC7つ道具に関する過去問と解説
目次

新QC7つ道具

「QC7つ道具」は、運営管理でも頻出の内容です。それぞれの名称はもちろんのこと、特徴や用途などについてもインプットしておきましょう。

新QC7つ道具とは

「新QC7つ道具」とは、製造現場における不良などの原因を整理・解決し、品質管理を行うために活用される代表的な7つの手法の総称です。

「QC:Quality Controld」とは、日本語で「品質管理」を意味し、製造現場において問題を解決し、適切な品質を維持するため活用されます。

製造現場においては、日々の製造活動の中で様々なトラブルや問題が発生します。

新QC7つ道具は、これらのトラブルや問題に対して、その原因と結果を整理して因果関係を把握し、改善に努めていくために活用される手法とされており、以下の7つがあります。

新QC7つ道具
  • 親和図法
  • 連関図法
  • 系統図法
  • マトリックス図法
  • アローダイアグラム法
  • PDPC法
  • マトリックスデータ解析法

中小企業診断士試験では、これら7つの名称と、それぞれが持つ目的に対してどのように活用されるのかを問う問題が出題されます。

そのため試験を突破するには、7つの名称とそれぞれの特長・活用方法が整理されていることが重要です。

そこでこの記事では、診断士試験で正誤の判断ができることを目的に、それぞれの手法についてよく出題されるキーワードと図解を混ぜて解説していきます。

QC7つ道具との違い

新QC7つ道具は、1980年頃から用いられ始めたと言われる、比較的新しい品質管理手法です。

それ以前には、「QC7つ道具」が多く用いられてきました。

「QC7つ道具」とは、製造現場における工程や品質に関するデータを収集・分析し、より効率的に生産を行うための改善策を検討するために用いられる品質管理手法であり、以下の7つの総称です。

QC7つ道具
  • グラフ
  • パレート図
  • チェックシート
  • ヒストグラム
  • 散布図
  • 管理図
  • 特性要因図

そして、「QC7つ道具」と「新QC7つ道具」の違いは、「扱うデータ」「使用場面」が挙げられます。

診断士試験では、QC7つ道具と新QC7つ道具がごちゃ混ぜになった選択肢の正誤を判断する問題が出題されるため、計14個をしっかり整理しておく必要があります。

扱うデータの違い

まず「扱うデータ」に関しては、QC7つ道具は「数値データ」を、新QC7つ道具では「言語データ」を主に用います。

例えば、QC7つ道具では、製造現場で実際に測定された「不良品数」や工程に要する「所要時間」などの数値的なデータを収集・分析した上で最適な改善策を検討します。

また、新QC7つ道具では、「不良品数が多い」や「作業者の所要時間が長すぎる」など、言語的なデータを図や表に整理することで、複雑な因果関係を整理して新たな管理手法を発想していきます。

このように、両者は扱うデータの内容が「数値データ」か「言語データ」かという点で異なっています。

使用場面の違い

次に、「使用場面」に関しては、QC7つ道具は「製造現場の解析」を、新QC7つ道具では「製造現場のみならず設計・企画」を行う点で異なっています。

QC7つ道具は、製造現場における数値データを収集・分析するアプローチですので、現場を解析して最適な改善につなげることに長けた手法です。

一方、新QC7つ道具は、実数値のみならず言語的なデータを用いて情報を整理するため、新たな管理手法・発想を生み出して設計・企画などの上流から品質改善を行うことに長けた手法と言えます。

このように、両者の使用場面が「製造現場特化」か「設計・企画まで幅広い」かという点も違いとして挙げられます。

新QC7つ道具のまとめ
  • 新QC7つ道具は、製造現場における不良などの原因を整理・解決し、品質管理を代表的な7つの手法の総称
  • QC7つ道具と新QC7つ道具は、「扱うデータ」と「使用場面」が異なっている。
  • 新QC7つ道具は、それぞれの名称と特徴が整理できていることが正誤の判断に必要。

親和図法

ここからは、新QC7つ道具に含まれる7つの手法について解説します。

「親和図法」とは、問題を引き起こしている複雑な要因や、未だ発生していない問題に対して、様々な言語的なデータを収集・整理して問題の全体像や構造を把握し、改善への取り組み方や方向性を導く手法です。

問題を発生させている要因が複雑だと、品質管理とはいっても何から取り組めばよいかが決められません。

こんな時、多くの言語データを収集・整理し、問題の全体像を把握して具体的な改善手法を検討していくために活用されるのが親和図です。

製造現場のみならず、設計・営業担当なども含めた多くの関係者から、アンケートなどを通じて言語データを収集します。

そして、収集したデータを親和性や関連性に基づいて上記のように整理することで、数値データのみでは把握できない問題の全体像やボトルネックを特定するために用いられます。

親和図法では、より多くの言語データを収集・整理した方が問題の把握がしやすくなります。そのため、担当を問わず様々な立場に方々から多くのデータを収集することが重要です。

親和図法の出題ポイント
  • 親和図法とは、言語データを親和性に基づいて整理し、問題の全体像やボトルネックを把握する手法。
  • 製造担当のみならず、設計・営業などを含む様々な関係者から言語データを収集する。
  • より多くの意見(言語データ)を収集し、多様な視点から問題を分析することが重要

連関図法

「連関図法」とは、問題を発生させている主要な原因を特定するために用いられる管理手法です。

製造現場において発生する問題は、様々な要因が絡み合って生じるていることがほとんどです。

このとき、連関図法を用いて複雑な要因の因果関係を整理し、最も問題の発生に映鏡を与えている要因を特定することができます。

連関図法では、解決したい問題を中心に置きます。(中央集中型)

そして、その問題を引き起こしていると考えられる要因を、その因果関係を記載しながら書き出していきます。

これにより、問題発生に大きな影響を及ぼしていると考えられる要因を特定し、効果的な対策を行うことができるわけです。

要因を発生させている要因同時の因果関係までを整理するため、複雑で問題発生のボトルネックが特定できないときに活用することができます。

親和図法の出題ポイント
  • 連関図法とは、問題を発生させている主要な原因を特定するために用いられる管理手法
  • 解決したい問題を中心に置き、問題発生の要因と因果関係を記載していく。(中央集中型)
  • 要因同士の因果関係まで整理するため、要因が複雑な時に影響度の大きい要因を特定できる。

系統図法

「系統図法」とは、目的を達成するための最適な手段を選定するための管理手法です。

上述した親和図法や系統図法を用いて、問題の全体像やボトルネックを特定できたら、それらを解決するための手段を検討しなければなりません。

このとき、系統図法を用いて目的と手段を列挙して、問題解決に効果的かつ実践しやすい最適な手法を選定していきます。

系統図法では、解決したい問題を「目的」として、その目的を達成するための「手段」を列挙します。

さらに、その「手段」を実行することを「目的」として、これを実現するための「手段」を列挙していきます。

このように、「目的」と「手段」をツリー状に列挙して整理することで、効果的かつ実現可能な手法を決定します。

例えば…
(目的)作業者のミスを減らす
(手段①)作業者への教育指導を実施する
(手段②)労働時間を減らして集中させる

1つの目的を達成する手段を段階的に整理することで、作業現場や金銭的な状況に合わせた最適な改善策を検討できることが系統図法のメリットです。

系統図法の出題ポイント
  • 系統図法とは、目的を達成するための最適な手段を選定するための管理手法
  • 解決したい「目的」に対して、解決のための「手段」を段階的に列挙していく。
  • 目的と手段を整理することで、状況に合わせた最適な解決策を検討できる。

マトリックス図法

マトリックス図法とは、「目的と手段」や「結果と要因」などの相互関係を行列形式で並べ、その関連度や重要性を整理するための管理手法です。

製造現場で発生する問題には様々な要因があり、どの要因が問題発生に大きな影響を与えているかを特定しなければなりません。これは親和図法や連関図法で進めてきましたね。

また、問題を特定できたとき、どの手段を使って解決を図ることが効果的なのかを決める必要があります。これは系統図法のアプローチです。

このような、「問題の特定」や「手段の決定」について、マトリックス(行列)を活用して進めていくのがマトリックス図法です。

まずは、「問題の特定」について見て見ましょう。

このマトリックスでは、行に発生している問題を、列に問題を発生させている要因をとっています。

そして、それぞれの要因が、どの問題にどれだけの影響を与えているかが記号で記されています。

このように、問題と要因の関係性を並べることで、どの要因を対処するべきかが一目で分かるようになっています。

このマトリックス図を見ると、問題Cの大きな原因であり、問題Aにも影響を与えている要因1にアプローチすると良さそうです。

次に、「手段の決定」についてです。

このマトリックスでは、行に検討している手段を、列に手段についての評価項目をとっています。

そして、それぞれの手段を実行する上での評価が記号で記されています。

このように、検討している手段とその評価を並べることで、どの手段を採択するべきかが一目で分かるようになっています。

このマトリックスでは、効果・実現性・コストの三項目で安定した評価をされている手段Cを採用すると良さそうです。

このように、マトリックス図法では、マトリックス(行列)を活用して相互関係を示し、対応すべき問題や手段を検討することに活用されています。

系統図法の出題ポイント
  • マトリックス図法とは、相互関係を行列形式で並べ、その関連度や重要性を整理するための管理手法
  • マトリックス(行列)に各要素との相互関係・評価を並べて可視化する。
  • 要素間の相互関係を可視化し、「重要な問題の特定」や「効果的な手段の決定」を行う。

アローダイアグラム法

「アローダイアグラム法」は、計画を進めるうえでの作業順序を矢印や結合点で結び、最適なスケジュールを管理・検討する管理手法です。

系統図法やマトリックス図法を用いて、問題を解決するための手段を決めたら、この手段を実行するための計画を検討しなければなりません。

この時に、アローダイアグラム法を用いることで、時間やコストの観点から最適な方法を検討していきます。

アローダイアグラムでは、それぞれの作業がどのくらいの時間を要するのかを記載しながら矢印で結んでいきます。

作業の全体像が可視化できることで、どの順番で作業を行うと効率的かを把握することができます。

アローダイアグラム法は、運営管理において生産計画の内容である「PERT」に出てくる重要な分野です。新QC7つ道具の中でも頻出ですので、しっかり押さえておきましょう!

アローダイアグラム法の出題ポイント
  • アローダイアグラム法とは、作業順序を矢印や結合点で結び、最適なスケジュールを管理・検討する管理手法
  • 各作業に必要な所要時間を記しながら、作業順序を矢印で結んでいく。
  • 作業の全体像が把握でき、最適・最短な作業順序を把握することができる。

PDPC法

「PDPC法」は、目的を達成するまでの過程で生じる障害と対応策を予測し、障害が発生しても目的を達成できるように検討する管理手法です。

アローダイアグラム法で最適な作業順序を決めたとしても、何か障害が発生すれば計画が順調に進むとは限りません。

このとき、PDPC法を用いて、あらかじめ発生する可能性のある障害とその対応策を検討しておくことで、確実に目的を達成できるように備えることができます。

PDPC法では、達成したい目的(赤枠)から、ゴール(青枠)までのルートを記入していきます。

そして、目的を実行するための過程の中で、発生するであろう問題や障害を想定しておき、その対応策も記入します。

これにより、あらかじめ発生しそうなリスクに対応し、想定したルート通りに目的を達成できるように備えることができます。

PDPC法では、順調に目的を達成できる「楽観ルート」に対して、あらゆる悲観的な出来事に対する対応策を考えます。新規事業や経験のない内容であれば、事前準備として成功確率を高めることに繋がります。

PDPC法の出題ポイント
  • PDPC法とは、目的達成までの過程で生じる障害と対応策を予測し、事前に対応策を検討する管理手法
  • 目的達成の楽観ルートと、その過程で発生する可能性のある悲観的な出来事を予測していく。
  • 事前にトラブルや障害に対する対応策を検討することで、目的達成の可能性を高めることができる。

マトリックスデータ解析法

「マトリックスデータ解析法」は、収集したデータを二次元平面図に表示して、データの特徴や傾向をわかりやすくするための管理手法です。

新QC7つ道具では言語データを用いていましたが、マトリックスデータ解析法だけは数値データを用いることが特徴です。

製造の品質を評価するときには、作業時間や順序、作業者の停止など、項目が多すぎて評価が難しくなることがあります。

このようなときに、相関性の高い評価項目をまとめて図面に展開することで、データと特徴を可視化して評価を進めていくのがマトリックスデータ解析法です。

このマトリックスデータ解析法では、第一主成分(横軸)に「生産能力」を、第二主成分(縦軸)に「安全性」をとっています。

言語データを用いて分析する新QC7つ道具では、生産能力や安全性を多くの項目を用いて分析します。

マトリックスデータ解析法では、「不良品率」や「所要時間」は生産能力に、「事故の発生率」や「作業の危険性」は安全性にまとめてしまい、これら総合した点数に応じて各製造ラインの評価を記入します。

これにより、各製造ラインの特徴や評価を可視化してわかりやすく把握することができます。

マトリックスデータ解析法の出題ポイント
  • マトリックスデータ解析法は、データを二次元平面図に表示して特徴や傾向をわかりやすくするための管理手法
  • 新QC7つ道具の中で唯一「数値データ」を用いる。
  • 数ある評価項目をまとめ、データの傾向や評価を可視化して把握しやすくする。

過去問と解説

令和5年度 第12問

令和5年度 第12問

品質改善に関する以下の文章において、空欄A~Cに入る品質管理に用いる技法の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。【引用】中小企業診断士試験問題 (j-smeca.jp)


ある職場において不適合品の多発という問題が起きている。問題とその要因の関係を明らかにするために 【 A 】 を作成した。その結果から、問題を解決するための手段の候補を明らかにすることで、 【 B 】を作成した。実際に、問題解決に向けた対策の実行スケジュールを決めるためにアローダイアグラムを作成し、さらに、想定外の事態などが起きた場合に備えて【 C 】を用いた検討を行った。


〔解答群〕
ア A:親和図   B:系統図   C:PDPC法
イ A:親和図   B:系統図   C:マトリックス図
ウ A:親和図   B:散布図   C:管理図
エ A:連関図   B:系統図   C:PDPC法
オ A:連関図   B:散布図   C:マトリックス図

↓答えを決めてからスクロールして解答をチェック!↓

解答解説

A:連関図
ある職場において不適合品の多発という問題が起きている。問題とその要因の関係を明らかにするために 【 A 】 を作成した。

➤➤「問題とその要因の関係を明らかにする」という文言から「連関図」が正解です。「親和図」は、言語データを親和性や関連性でグループ化して問題の全対応を把握するための管理手法です。

B:系統図
その結果から、問題を解決するための手段の候補を明らかにすることで、 【 B 】を作成した。

➤➤「問題を解決するための手段の候補を明らかにする」という文言から「系統図」が正解です。「散布図」は、QC7つ道具のひとつで、2つの特性の相関関係を明らかにするものです。

C:PDPC法
実際に、問題解決に向けた対策の実行スケジュールを決めるためにアローダイアグラムを作成し、さらに、想定外の事態などが起きた場合に備えて【 C 】を用いた検討を行った。

➤➤「想定外の事態が起きた場合に備えて」という文言から「PDPC法」が正解です。「楽観ルート」や「想定外の事態に対して」などもキーワードが出てきたときは「PDPC法」であると覚えておきましょう。

まとめ

当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、運営管理の頻出分野である「QC7つ道具」について、診断士試験で正誤を判断するために押さえておきたいポイントを整理してみました。

運営管理で出題されるQC7つ道具は、それぞれの手法の特徴や目的が整理されていれば得点ができるようになっていることがほとんどです。勉強の合間に見返して整理しておき、本番での得点源にしてくださいね!

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