【中小企業診断士】科目別の難易度・合格率を分析!合格までの勉強時間とポイントも解説

中小企業診断士試験に合格するためには、一次試験と二次試験を突破する必要があります。

しかし、一次試験だけでも全7科目の幅広い学習範囲を学ぶ必要があり、決して簡単に合格できる資格ではありません。

この記事では、中小企業診断士の一次試験について、科目別の合格率や難易度から、実際に合格した私が科目ごとに割いた勉強時間と勉強のポイントを解説します。

科目ごとの難易度と勉強のポイントを理解して、確実に合格に近づける学習計画を立てる際の参考にしてください!

この記事でわかること
  • 中小企業診断士・一次試験の概要
  • 全7科目それぞれの難易度や合格率
  • 私が各科目に割いた勉強時間と試験結果
  • それぞれの科目の難しさと勉強を進めるコツ
目次

中小企業診断士・一次試験の全体像

まず初めに、中小企業診断士一次試験の概要・全体像をお話しします。

試験科目

中小企業診断士の一次試験では、全7科目の経営に関する幅広い内容を学習する必要があります。

日程科目配点試験時間
1日目経済学・経済政策100点60分
財務・会計100点60分
企業経営理論100点90分
運営管理(オペレーション・マネジメント)100点90分
2日目経営法務100点60分
経営情報システム100点60分
中小企業経営・政策100点90分

組織やマーケティングからIT、法律など、経営に関するあらゆる知識を体系的に学ぶことができる試験になっています。

実務で触れたことのない分野にも着手する必要があり、膨大な試験内容を限られた時間の中でいかに効率的に学習できるかが合格のカギになる試験です。

一次試験の合格基準

中小企業診断士一次試験の合格基準は以下の通りです。

一次試験の合格基準

①第1次試験の合格基準は、総点数の60%以上であって、かつ1科目でも満点の40%未満のないことを基準とし、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。
②科目合格基準は、満点の60%を基準として、試験委員会が相当と認めた得点比率とします。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

100点×7科目の試験ですので、700満点中420点を取り、かつ40点以下の科目が無ければ合格です。

また、総得点が420点に満たなかった場合でも、60点を超えた科目に関しては「科目合格」として扱われ、2年間免除を受けることができます。

苦手科目を得意科目でカバーしたり、科目合格を活用しながら数年で合格を目指すなど、ご自身の学習環境に合わせて戦略を立てることも重要です。

一次試験の合格率

中小企業診断士一次試験の合格率の推移は以下の通りです。おおよそ20%~30%程度で推移しており、過去18年間の平均は24.8%でした。

中小企業診断士試験 申込者数・合格率等の推移 suii_moushikomisha.pdf (j-smeca.jp)を元に作成

最近では、科目合格制度が導入されたり、中小企業診断士試験を受験する人が増えていることもあり、絶対評価である一次試験の合格率は高まりつつあります。

合格率が高まっていることは安心できる一方で、試験問題を難しくすることで合格率を調整するなどの策を採ってくる可能性も否めないため、油断は禁物です。

日程や費用

一次試験の日程・受験費用は以下の通りです。

日程:8月第1週の土日(例年の傾向)
費用:14,500円

経済学・経済政策

ここからは、中小企業診断士・一次試験の各科目について見ていきます。まずは「経済学・経済政策」です。

経済学・経済政策の概要

科目設置の目的

企業経営において、基本的なマクロ経済指標の動きを理解し、為替相場、国際収支、雇用・物価動向等を的確に把握することは、経営上の意思決定を行う際の基本である。また、経営戦略やマーケティング活動の成果を高め、他方で積極的な財務戦略を展開していくためには、ミクロ経済学の知識を身につけることも必要である。このため、経済学の主要理論及びそれに基づく経済政策について、以下の内容を中心に知識を判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

経済学・経済政策では、経済全体の情勢を把握する「マクロ経済学」から、消費者の行動傾向を把握する「ミクロ経済学」まで、経済学の基本的な考え方を網羅的に学習する科目です。

経済学の基本モデルである「無差別曲線」や「IS-LMモデル」など、数字やグラフを使った計算問題も出題されます。

経営コンサルタントとして、経済情勢を把握したうえで的確なアドバイスが出せることはもちろん、日々の経済ニュースなどを深く理解できるようになります。

経済学・経済政策の合格率・難易度

年度によって合格率にかなりの変動がありますが、過去18年間の合格率平均は18.7%です。

中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成

近年では、頻出の論点でも応用的な選択肢が含まれているなど、深い理解がないと正誤の判断ができない問題も増えており、合格が難しくなってきている難易度★★☆の試験科目です。

二次試験との関連度

経済学・経済政策の二次試験との関連度:★☆☆

経済学・経済政策は、二次試験との関連はほとんどありません。一次試験を突破することに特化した学習を進めましょう。

私の勉強時間と試験結果

勉強時間:155時間 /1,313時間
試験結果:68点 /100点

私自身、大学で経済学を専攻していたこともあり、経済理論やモデルに少しだけ馴染みがありました。そのため、他の科目に比べて比較的短めの勉強時間で望んでいます。

勉強時間のほとんどを、基本的な理論の理解を深めるインプットと過去問演習だけ繰り返し、どのような角度から問われても答えられるように準備していました。

得意科目だと自覚していたので高得点を狙っていましたが、本番一発目の試験科目ということもあり、ケアレスミスを頻発しました…

ここが難しい

  • 初学者だと、経済学の理論・モデルに慣れるまで時間がかかる。
  • グラフを読み取る問題や、計算問題などの数学っぽい問題も出題される。
  • 経済動向など、経済に関する時事問題も出題される可能性がある。
  • 1問当たり4点が配点されるためミスが響く。
  • すべての選択肢の正誤を判断できないと正解できない問題が出題される。

経済学では、経済学特有の理論やモデルを用いて分析を行います。経済学を攻略するには、この考え方に慣れた上でグラフや計算を駆使して問題を解かなければなりません。

またこれが厄介なんですが、「正しい選択肢を1つ選べ」ではなく、「a:正、b:誤、c:正」のように全ての選択肢の正誤の判断ができないといけない問題がたくさん出てきます。

勉強のコツ

  • 内容に深入りせず、試験に必要な個所のみしっかりと理解する
  • インプットの段階で、自分でグラフを書いてみる。
  • どのような角度から問われてもいいように、過去問には多く触れておく。
  • スキマ時間があれば、経済ニュースに目を通しておく。

最も重要だと感じているのは、「必要な箇所だけしっかり理解する」ことです。

経済学は、深入りしようとすると底なし沼にハマっていく分野です。あくまで診断士試験で正誤の判断に必要な箇所だけ、グラフを用いて深く理解することを意識しましょう。

試験攻略に必要な内容はテキストと過去問に集約されているので、私は経済学の本を読んだりするのではなく、なるべく多くの過去問に触れておいた方が良いと感じています。

財務・会計

次に2科目目の財務・会計についてお話しします。

財務・会計の概要

科目設置の目的

財務・会計に関する知識は企業経営の基本であり、また企業の現状把握や問題点の抽出において、財務諸表等による経営分析は重要な手法となる。また、今後、中小企業が資本市場から資金を調達したり、成長戦略の一環として他社の買収等を行うケースが増大することが考えられることから、割引キャッシュフローの手法を活用した投資評価や、企業価値の算定等に関する知識を身につける必要もある。このため、企業の財務・会計について、以下の内容を中心に知識を判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

財務・会計では、簿記を使って会社のお金を計算したり、資金を投資する際の採算性などを分析します。

いわゆる「財務諸表」を読み取って会社の財政状態を分析したり、「NPV」を用いて投資意思決定を行うなど、会社のお金回りのことをアドバイスできるようにならなければなりません。

選択問題とはいえ、多くの問題が計算をしなければ答えが出せないようになっています。

財務・会計の合格率、難易度

財務会計の合格率は他の科目に比べて最も低く、過去18年間の合格率平均は14.3%です。

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財務・会計は、一次試験の中でも最も合格率の平均が低い、難易度★★★の科目です。

多くの計算式を暗記して、短い試験時間でミスなく計算しなければいけません。7科目の中でも最も力を入れて勉強をした方が良い科目と言えるでしょう。

二次試験との関連度

財務・会計の二次試験との関連度:★★★

財務・会計は、二次試験の「事例Ⅳ」と直結しており、関連度が非常に高い科目です。

二次試験では、一次試験で学習した数式を用いて、事例企業の財政状態や投資意思決定を判断する内容が出題されます。二次試験を見据えて財務・会計を得意になっておくと後々楽になります。

私の勉強時間と試験結果

勉強時間:174時間 /1,313時間
試験結果:56点 /100点

私は診断士試験の前に「簿記2級」を取得していたため、財務諸表の部分はほとんど勉強していません。

勉強時間のほとんどを経営分析やNPVに割いていました。しかし、唯一60点に到達できないという結果になっています。

会計に関するルールや仕組みに関する、計算問題以外で失点してしまったことが原因です。

ここが難しい

  • 簿記に触れたことが無いと、財務諸表の基礎から学習を始めなければならない。
  • 覚えなければいけない計算式の数が多い。
  • 投資意思決定の計算問題の難易度が高い。
  • 試験時間が60分と短く、ゆっくり計算していられなくて焦る。
  • 会計・帳簿のルールに関する難題が増えている。

財務・会計の難しさは、なんといっても「素早くミスなく計算をする」ことが求められる点でしょう。

経営分析からNPVの算出など、頻出の計算問題は暗記しなければなりません。また、地味に厄介な「会計・帳簿のルール」の細かい内容をという問題が増えてきています。

勉強のコツ

  • 頻出の計算問題は、数式を暗記して何度も解いておく。
  • DCF」や「NPV」の計算は、二次試験でも使うので早めに得意になっておく。
  • 会計・帳簿のルールは、過去問で出てきた箇所を覚えていく。
  • 過去問演習の段階で、電卓を使わず暗算に慣れておく。

財務・会計は、インプットしたら計算を繰り返すアウトプットに早く入ってしまいましょう。

会計のルールについては、すべて覚えようとするとキリがないので、出題されたことのある論点だけを過去問演習で触れてい行けば十分です。

また、一次試験では電卓が持ち込めないので、小数点の計算なども暗算で行うことに慣れておくと本番で冷静に解くことができるのでオススメです。


企業経営理論

企業経営理論の概要

科目設置の目的

企業経営において、資金面以外の経営に関する基本的な理論を習得することは、経営に関する現状分析及び問題解決、新たな事業への展開等に関する助言を行うにあたり、必要不可欠な知識である。また、近年、技術と経営の双方を理解し、高い技術力を経済的価値に転換する技術経営(MOT)の重要性が高まっており、こうした知識についても充分な理解が必要である。このため、経営戦略論、組織論、マーケティング論といった企業経営に関する知識について、以下の内容を中心に判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

企業経営理論は、企業の戦略の方向性を検討する「経営戦略論」、事業の拡大を進めるための「マーケティング論」、組織の在り方・人材活用を検討する「組織論」から構成されています。

中小企業診断士試験の中でも最も経営コンサルタントらしい科目になっており、企業の在り方から事業戦略・マーケティングの定石を理解することが求められます。

企業経営理論の合格率、難易度

企業経営理論についても、年度によってかなり変動していますが、過去18年間の合格率の平均は16.9%です。

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企業経営理論は、知識に加えて文章を読み取る力や論理的思考力が求められる科目です。

膨大な知識を深く理解していることが正誤の判断に必須であり、かつ二次試験でも中心となる科目であるため、企業経営理論は難易度★★★の科目と言えるでしょう。

二次試験との関連度

企業経営理論の二次試験との関連度:★★★

企業経営理論は、二次試験の「事例Ⅰ」と「事例Ⅱ」に直結し、最も関連度の高い科目です。

二次試験を受験するとき、企業経営理論の内容がしっかりと理解できていることは必要不可欠です。

私の勉強時間と結果

勉強時間:224時間 /1,313時間

試験結果:79点 /100点

覚える量も多く、二次試験との関連性も高い科目であるため、比較的勉強時間を長めに確保しました。

勉強方法としては、用語の暗記はもちろん、過去問演習を繰り返すことで理解を深めていくようにしています。

結果としては、分野問わず満遍なく点数を積み上げることができ、約8割の得点率で合格することができました。

ここが難しい

  • 用語を暗記しているだけでは文章の正誤を判断できない。
  • 5択問題が多く、選択肢の文章も長いため、論理的に文章を読み取る能力が求められる。
  • 会社の組織や戦略、マーケティングなどには正解がないため、抽象的な内容も多い。
  • 労働関連法規では、かなりの量の法律を暗記しなければならない。

企業経営理論の難しさは、「用語を暗記するだけでは正誤の判断ができない」ことです。

1つの選択肢の文章が長く、かつ日本語を正確に読み取れる文章読解力がベースとなり、そのうえで知識があることで正誤が判断できるような構成になっています。

また、「労働関連法規」という法律の暗記分野が地味に時間がかかって厄介になっています。

勉強のコツ

  • 正誤の判断・二次試験に備えて、用語の暗記だけでなく深い理解を意識する。
  • 文章が長い選択肢に慣れるため、時間を図りながら過去問を解き進める。
  • 過去問に出てきた知らない用語は、時間があれば解説だけは暗記しておく方が良い。
  • 労働関連法規に時間を割きすぎない。

企業経営理論では、用語の暗記ではなく「用語の深い理解」に焦点を当てましょう。

一次試験では複雑な文章を正しく読み取るために、二次試験では事例企業に助言が記述できるように、知識を覚えているだけでなく深い理解が求められます。

過去問演習を繰り返して、様々な問われ方をされても解けるように準備しておきましょう。。

運営管理(オペレーション・マネジメント)

運営管理(オペレーション・マネジメント)の概要

科目設置の目的

中小企業の経営において、工場や店舗における生産や販売に係る運営管理は大きな位置を占めており、また、近年の情報通信技術の進展により情報システムを活用した効率的な事業運営に係るコンサルティングニーズも高まっている。このため、生産に関わるオペレーションの管理や小売業・卸売業・サービス業のオペレーションの管理に関する全般的な知識について、以下の内容を中心に判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

運営管理(オペレーション・マネジメント)では、製造業や小売業における生産・販売オペレーションについて、診断士として助言ができるようになるための科目です。

そのため、生産管理については、「工場のレイアウト」や「生産計画」などのオペレーションについての考え方を学習します。また販売管理については「お店のレイアウト」や「仕入・発注方法」などを方法を学習します。

中小企業の多くを占める製造業や小売・卸売業のオペレーション全般の定石を理解する必要があります。

運営管理(オペレーション・マネジメント)の合格率、難易度

運営管理(オペレーション・マネジメント)の合格率は下がりつつある傾向にあり、過去18年間の平均は17.4%です。

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私が受験した2023年度には、運営管理が非常に難化したと言われています。

実際に解いていて感じたのは、始めて見る内容の問題や計算問題も多く、自信を持って解答できた問題が少なかった印象です。

今後も、情報システムを活用したオペレーション管理や計算問題の出題が増える可能性もあるかと思いますので、注意が必要な難易度★★★の科目です。

二次試験との関連度

運営管理(オペレーション・マネジメント)の二次試験との関連度:★★★

運営管理は、二次試験の「事例Ⅲ」と直結している科目です。

「事例Ⅲ」では、製造業を営む事例企業が登場し、その企業の生産工程や管理についての現状を読み取ったうえで助言を記述することが求められます。

運営管理のオペレーションに関する知識がそのまま記述に使えるため、特に生産管理の分野はしっかりと学習しておくと良いでしょう。

私の勉強時間と結果

勉強時間:207時間 /1,313時間
試験結果:67点 /100点

私は、製造・販売業務に携わったことが無かったため、内容のイメージが全く湧かずに苦手意識を持っていました。

そのため、インプットの段階から比較的多めに時間を割いて、過去問は直近5年分だけを完璧に仕上げました

その結果、難化したと言われる中でも、得点するべき問題をしっかりと取ることができ、合格点を取ることができました。

ここが難しい

  • 生産管理など、実務経験が無いとイメージがしにくい内容が多い。
  • ちょっとした計算問題が出題されるため対策が必要。
  • 作業工程や発注方法など、似たような内容で暗記する量が多い。
  • 「CAD」や「SCM」など、近年に主流になりつつある新たな用語も出題される。

運営管理の難しさは、「運営管理の実務経験が無いとイメージができない」点です。

工場のオペレーションや計画・管理などと言われても、一切イメージが湧きません。結局は、オペレーションの基本を覚えてしまえばいいのですが、イメージが湧かないと暗記も捗りにくいです。

また、情報システムを用いたオペレーションや計算問題など、過去問を解いていても見たことが無い用語が本番でたくさん出てきて、本番でかなり焦ったのを覚えています。

勉強のコツ

  • 図や写真を使って、なんとなくのイメージを持っておく。
  • イメージが湧かなくても、オペレーションの基本定石だけ暗記しておけば点は取れる。
  • 計算問題の対策は、計算式だけ暗記して数字を当てはめる。
  • テキスト・過去問に無い用語は誰もわからないので、頻出分野だけ完璧にする。

どの科目にも言えることですが、運営管理では「試験に受かる知識があればいい」ことを覚えておくといいかもしれません。

本番で運営管理を解いていて、「診断士試験は本番で知らない用語が出てきたときにどう対処するか」が合否に影響すると感じています。

運営管理については、生産・販売のオペレーションの基本はテキストにすべて集約されており、年によってコロコロ変わるものではありません。

テキストや直近の過去問を完璧に仕上げることに注力して、知らない内容については取れたらラッキーくらいに深入りしない方が得策かと思います。

経営法務

経営法務の概要

科目設置の目的

創業者、中小企業経営者に助言を行う際に、企業経営に関係する法律、諸制度、手続等に関する実務的な知識を身につける必要がある。また、さらに専門的な内容に関しては、経営支援において必要に応じて弁護士等の有資格者を活用することが想定されることから、有資格者に橋渡しするための最低限の実務知識を有していることが求められる。このため、企業の経営に関する法務について、以下の内容を中心に基本的な知識を判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

経営法務では、会社経営において理解が必要になる法律を網羅的に学習する暗記科目です。

「会社法」や「民法」など、経営コンサルタントとして知っておかなければならない法律を広く知っておくことが目的となり、細かい数字やルール等を時間をかけて覚えていく必要があります。

経営法務の合格率、難易度

経営法務の合格率は、近年は上昇傾向にあり、過去18年間の合格率平均は14.9%です。

中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です (j-smeca.jp)を元に作成

経営法務は、法律の条文から問題が作成されるため、問われる内容は大きく変わりません。

しかし、選択肢の複雑さや微妙なニュアンスの違いによって難易度が大きく変わるのも特徴です。

近年は、頻出の法律をしっかりと理解していれば解ける問題が増えており、基礎を徹底することが重要になっています。

近年の出題傾向や合格率を加味すると、難易度★★☆の試験科目と言えます。

二次試験との関連度

経営法務の二次試験との関連度:★☆☆

経営法務は、二次試験との関連性はほとんどありません

あくまで一次試験を突破できるように、頻出の法律をしっかりと理解することに焦点を当てて学習を進めましょう。

私の勉強時間と結果

勉強時間:229時間 /1,313時間
試験結果:84点 /100点

私は勉強している中で、経営法務が一番苦手だと感じていました。

暗記自体は得意だと自覚していたのですが、法律特有の「微妙な数字の違い」や「お堅い条文」に苦戦して、最も勉強時間を割いた科目です。

結果としては、2023年度の問題が比較的易しかったこともあり、全科目の中で最高得点を取って余裕で合格できました。

ここが難しい

  • とにかく覚えなければならない法律・条文が多い。
  • 法律特有の似たような文章や数字の違いなど、なかなか暗記が捗らない。
  • 例外」が厄介すぎる
  • 選択肢のうち1つは初めて聞く内容が含まれていることが多い。

経営法務で厄介なのは、「暗記量が多い」ことに加えて「例外」が表れることです。

せっかく条文を覚えても、どの法律にも「例外」というチートが表れます。

選択肢には、「~の場合は適用されない」などというように、「条文の暗記」+「例外の暗記」が求められることが、なんとなく完璧に仕上がらない原因になってきます。

勉強のコツ

  • 暗記ができればいいので、暗記カードなどを作って覚えることに集中する。
  • 「例外」については、テキストに出てくるものだけ覚えておけば十分。
  • 「会社法」「民法」「知的財産権」だけは解けるようにしておく。
  • 「英文問題」は英語が少しでも読めるなら捨てない方がお得。

経営法務は、「法律の暗記さえできていればいい」科目です。

出題される条文はテキストに載っているものだけなので、その条文を暗記することだけに注力しましょう。

特に経営法務では、「会社法・民法・知的財産権」の3分野から7~8割ほどが出題されるので、時間が無い方や足切りさえ回避できれば良いと考えている方は、極論この3分野だけ学習すればよいかもしれません。

経営情報システム

経営情報システムの概要

科目設置の目的

情報通信技術の発展、普及により、経営のあらゆる場面において情報システムの活用が重要となっており、情報通信技術に関する知識を身につける必要がある。また、情報システムを経営戦略・企業革新と結びつけ、経営資源として効果的に活用できるよう適切な助言を行うとともに、必要に応じて、情報システムに関する専門家に橋渡しを行うことが想定される。このため、経営情報システム全般について、以下の内容を中心に基礎的な知識を判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

経営情報システムでは、コンピュータシステムの構造や仕組みを理解する「情報通信技術に関する基礎的知識」と、システムを運用・管理する「経営情報管理」から構成されています

「情報通信技術に関する基礎的知識」では、ハードウェアやネットワークなどのシステムの内部を学ぶ内容となっており、見慣れないカタカナがたくさん出てきます。

「経営情報管理」では、実際にシステムをどのように管理・運用していくかの計画や管理手法を学習します。

経営情報システムの合格率、難易度

経営情報システムの合格率は、一昔前はかなり高かった一方で、近年の合格率は低く推移しており、過去18年間の合格率平均は19.9%です。

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近年の経営情報システムでは、情報技術の発展に合わせて登場する新たなシステムがタイムリーに出題され、過去問でも見たことが無い用語がとにかくたくさん出てきます。

技術進歩が進み、経営においても情報システムを活用することが求められることで、経営コンサルタントとしてもこの領域に関する深い知見を有していることが求められ、難易度が上がっているのかもしれません。

この軟化傾向を加味すると、難易度★★☆の試験科目と言えます。

二次試験との関連度

経営情報システムの二次試験との関連度:★★☆

経営情報システムは、特定の事例に直結しているわけではありませんが、どの事例でも情報システムを活用した助言を記載することが求められています。

情報システムは、あらゆる事例企業が抱える課題を解決する手段として有効であることが多く、経営情報システムで学習した知識を事例企業に提案することは十分にあり得るでしょう。

私の勉強時間と結果

勉強時間:172時間 /1,313時間
試験結果:68点 /100点

私はメーカーでコンサル営業をしていたので、情報システムについて一切知識がありませんでした。

そのため、システムの基本的知識の暗記時間を割いていました。

結果としては、2023年度は難化傾向で半分くらい見たことが無い用語だったこともあり、解き終わったときには足切りすらあり得るかもしれないと思うくらいに手ごたえが無かったのですが、結果68点が取れました。

テキストの内容は完璧にインプットできており、その分で選択肢を2択には絞れていた問題が多かったことが勝因だと感じています。

ここが難しい

  • 見慣れない・聞き慣れない情報システムに関するカタカナ用語を暗記しなければない。
  • 「UDP」や「DHCP」など、アルファベット3~4文字の用語が多すぎる。
  • テキスト・過去問に掲載が無い最新の情報システムも出題される。
  • 選択肢のうち1つは知らない用語が出てくるため、絞り切るスキルが必要。

経営情報システムの難しさは、「覚えにくい用語の暗記」と「始めて見る用語への対応」が求められる点です。

情報システムに触れたことが無いと、とにかく紛らわしいアルファベットやカタカナ用語をうまく整理して覚えなければなりません。

また、本番では知らない用語が大量に出てくるため、その中でも選択肢を絞って正答率を高めるために、頻出内容をしっかりインプットした上で選択肢を絞れるスキルが求められます。

勉強のコツ

  • 暗記シートやアプリを使ってスキマ時間に何度も復習する。
  • 紛らわしいアルファベットは、英語の意味から理解して暗記する。
  • 知らない用語は表れるものだと割り切って、テキストの内容を完璧にすることを優先する。
  • 過去問で知らない用語に出会っても、なんとなく知っている程度にとどめておく。

経営情報システムでは、「テキストの内容を完璧に暗記する」ことだけにこだわりましょう

始めて見る用語を重く捉えてしまうと、いくら勉強しても完璧に仕上がらないでしょう。

また、頻出の用語さえしっかり覚えていれば選択肢が絞れて解けるような構成で作られています。この辺は問題作成者側も工夫をしてくれていると信じましょう。

中小企業経営・政策

中小企業経営・政策の概要

科目設置の目的

中小企業診断士は、中小企業に対するコンサルタントとしての役割を期待されており、中小企業経営の特徴を踏まえて、経営分析や経営戦略の策定等の診断・助言を行う必要がある。そこで、企業経営の実態や各種統計等により、経済・産業における中小企業の役割や位置づけを理解するとともに、中小企業の経営特質や経営における大企業との相違を把握する必要がある。また、創業や中小企業経営の診断・助言を行う際には、国や地方自治体等が講じている各種の政策を、成長ステージや経営課題に合わせて適切に活用することが有効である。このため、中小企業の経営や中小企業政策全般について、以下の内容を中心に知識を判定する。

【引用】令和5年度中小企業診断士 第1次試験案内・申込書 05_1ji_annai.pdf (j-smeca.jp)

中小企業経営・政策は、簡単に言うと、「中小企業診断士なら中小企業のことは詳しく知っておこう」という科目です。

中小企業経営では、毎年中小企業庁は発表している「中小企業白書」から、その年の中小企業の動向や環境が出題されます。

中小企業政策では、中小企業の定義から、中小企業を支援する機関や施策内容を理解することが求められます。

中小企業経営・政策の合格率、難易度

中小企業経営・政策の合格率も年度による変動が激しく、過去18年間の合格率平均は16.7%です。

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中小企業経営・政策は、学問というよりも中小企業のことをどれだけ知っているかを問う試験科目です。

それゆえ、深い理解もそこまで必要とされない比較的簡単な科目ともいわれることもあります。

最後の7科目目ということもあり、あまり時間をかけずに合格点を狙う方も多いです。しかし、合格率は決して高くないため油断せずにしっかり対策を行うべき難易度★★☆の科目です。

二次試験との関連度

中小企業経営・政策の二次試験との関連度:★☆☆

中小企業経営・政策は、二次試験との関連性はありません

具体的な支援機関や補助金を提案することはないので、一次試験突破のための知識取得に注力しましょう。

私の勉強時間と結果

勉強時間:152時間 /1,313時間
試験結果:80点 /100点

私は、中小企業経営の対策としては、テキストに掲載されている重要な箇所は完璧に暗記した上で、中小企業白書も一通り読みました。

また、中小企業政策の対策には、テキストに掲載されている支援機関・支援策はかなり詳細に暗記していました。

白書に目を通していたことで得点できた問題もあり、本番では80点を取ることができました。

ここが難しい

  • 中小企業白書のページ数が多く、どこが重要なのか分かりにくい。
  • 支援機関・支援策については、条件や金額が異なることで紛らわしくなっている。
  • 中小企業経営(過去問の前半)は、年度によって内容が異なるため過去問対策ができない。

中小企業経営・政策の難しさは、「イマイチ何をどのように対策すればいいか分からない」点です。

中小企業経営については、中小企業白書からの出題とはいえ、中小企業白書だけで全900ページぐらいのボリューム感で、かつ小規模企業白書からの出題もあるとなると、すべてを完璧に暗記するのは不可能です。

また、中小企業白書は毎年内容が変わるため、過去問を解いても内容が全然違うのであまり意味が無いです。

中小企業政策は、年度のよって内容が変わるものではないので得点源にしたいところですが、支援機関名や支援策がなんとも覚えにくい厄介な内容になっています。

勉強のコツ

  • 中小企業白書の中でも、テキストがまとめてくれている箇所だけは完璧に覚える。
  • スキマ時間や勉強の合間に、読書感覚で中小企業白書を読んでおく。
  • 中小企業政策は、「中小企業の定義」や「支援機関・支援策」は絶対に得点する。

中小企業政策の攻略は、「最新版のテキストを完璧にする」ことが一番の近道です。

結局のところ、過去の出題傾向を徹底的に分析した上で、膨大な量の中小企業白書を必要な箇所だけ要約してくれているテキストで学習するのが最も効率がいいです。

また、中小企業政策に関しては、問われる内容も大きく変わらず、過去問演習も行うことができるため、なるべく得点源にできるように重点的に学習を進めておくと良いでしょう。

私が使っていたテキスト・アプリ等

私が実際に一次試験対策として使用していたテキストやアプリを紹介します。

テキスト

一次試験対策には、TAC出版のテキスト・問題集・過去問の3点セットを7科目分使用しました。

ます、1か月で1科目分のテキスト・問題集を完璧にします。

そして、7か月間で7科目分が終わったら、8か月目から本番まで過去問を解き続けました。

STEP
スピードテキストでインプット

各科目でインプットすべき内容は、テキストにすべて集約されています。

他の参考書には一切手を出さず、この一冊を完璧にするだけで知識量は十分です。

STEP
スピード問題集でアウトプット

テキストを覚えながら、一章が終わったタイミングで問題集を解いていました。

分野ごとに、過去問形式で問題がまとめられているため、インプットした知識が試験でどのように問われるのかの掴みながら知識を深めることができるためオススメです。

STEP
過去問演習

テキストと問題集が全科目終わり次第、過去問を解き続けていました。

過去問を解くことで、科目ごとの得意・不得意が明確になり、苦手な箇所だけテキストに戻って再度学習していきます。

私は直近5年分の過去問を何度も解いて、間違えた箇所だけ見返すように復習していました。

アプリ

勉強時間の管理には、「Studyplus(スタディプラス)」がオススメです。

多くの受験生が勉強時間を管理するときに使っているアプリで、科目別の勉強時間やテキストに応じて分類したり、簡単な操作で記録ができます。

勉強計画を立てたり、モチベーション維持のためにも勉強時間を記録することをオススメします。

Studyplus(スタディプラス) 日々の学習管理に
Studyplus(スタディプラス) 日々の学習管理に
開発元:Studyplus Inc.
無料
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暗記科目の勉強を進めるときには、「FlashCard(フラッシュカード)」がオススメです。

「FlashCard(フラッシュカード)」は、自分の好きなスタイルの暗記カードを作成できるアプリです。

スマホで暗記カードを作っておくことで、通勤や休憩時間などのスキマ時間を活用して暗記を進めることができます。

暗記カード FlashCard - 単語帳を自分で作る&共有
暗記カード FlashCard – 単語帳を自分で作る&共有
開発元:Toshiki Motomura
無料
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まとめ

当記事を最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、中小企業診断士試験の一次試験について、科目ごとの難易度や合格率から、実際に合格した私が各科目に割いた勉強時間と学習のポイントをお話しいたしました。

中小企業診断士試験は、一次試験・二次試験ともに合格率も低く、簡単に合格できる資格ではありません。
特にこの資格は、会社員として働きながら、家庭や子育てと両立しながら学習を進めるなど、そもそも勉強時間を確保することすら難しい方が多く受験しています。

そんな資格だからこそ、試験の概要や科目ごとの難易度を知ったうえで、戦略的に学習計画を立てることが合格には欠かせません。逆に長期戦が強いられる試験である分、綿密な学習計画に基づいて努力さえできれば、ストレート合格も狙えるでしょう。

これから受験勉強を始めようと考えている方も、今まさに学習を進めている方も、今一度ご自身の学習計画を見直す際の参考にしていただければ幸いです。

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